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園子温監督映画【愛のむきだし】鑑賞後は誰もが西島隆弘ロスに陥る?

ー本記事は2018年9月18日に公開済みですー

テレビを見なくなった我が家に『悪魔のスティック』が導入されて以来、地上波テレビ放送ではない映像をガンガン見るようになりました、スー(@bacteria_suzu)です。

本日もお越しいただきありがとうございます。

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初めは、子供たちがテレビを見たがったときに時間を決めて見るためくらいにしか使っていませんでした。

それが今では、大人の方がその恩恵にあやかりまくりなのです。

子供が寝静まった後、こっそり見る「キワモノの邦画」が私のささやかな楽しみになってしまいました。

育児と家事に追われる毎日で、どこにゆっくりビデオなんて見れる時間がある??

と勝手に思い込んでいましたが、心を揺さぶるような素晴らしい『映画』という娯楽が、昔から大好きだった私の封印を【悪魔のスティック】が見事に解いてしまったんですね。

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そして、家族や友人と気軽に映画トークができないようなキワキワの、泥臭い、R指定とか付いちゃってる「邦画」を夜な夜なこっそりと見ています。

そんな中で、俳優のスゴさをまざまざと見せつけられ、改めて「映画」っていいなぁと思えた作品をご紹介したいと思います。

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園子温監督【愛のむきだし】は爽やかな狂気作品

映画というのは、好みがすごく出る娯楽だなと思います。

ジャンルにこだわらず、
俳優や監督にこだわらず、
洋・邦問わずなんでも観る、

といっても、その人のお気に入り映画にはその人の本質というか、心の闇みたいなものが出ていると思うんです。

私は、淡々とした平和な日常ととんでもない狂気が絶妙に入り混じっている映画が好きです。

もちろん普通に面白いエンタメ作品や時代物も好きですが、

人の想像力の限界を超えた力を見せつけられた時にものすごく感動するし、心を揺さぶられますね。

【園子温】という人も、そんな人の心をえぐるような、毎日の平和がぶっ壊れる瞬間を描くことに関して天才といえる監督だと思います。

時にその狂気が痛すぎて、数日間エグさを引きずってしまうこともなくはないですが…。

【愛のむきだし】がAmazonプライム・ビデオにアップされていたことに気付いたのは、

園子温監督の【冷たい熱帯魚】という、エゲツナイ映画を見てしまった後で、「あなたへのオススメ」映画の中にラインナップされていたからです。

4時間の園子温ワールド

最初から映画館での放映を目的としていなかったという監督は、この映画を作った2009年以降には、ホームシネマが普及していくだろうと予想を立てていたそうです。

4時間弱の仕上がりにはなっていますが、元々は6時間もの大作だったのを削って削って4時間に収めたといわれていますね。

2017年の2月には、『愛のむきだし【最長版 ザ・テレビショー】』がJ:COMオンデマンドで全10話のテレビシリーズとして放映されました。

6時間に及ぶ「ファーストカット」バージョンを基に再構成され、映画未使用シーンも1時間以上復元されています。

4時間見ても全然苦にならず、むしろまだ終わってほしくないとさえ思える【愛のむきだし】

分厚い本を、しおりを挟み挟み日を追ってちょっとずつ読む感覚で、ちびちびと見たこの【愛のむきだし】

見終わってしまってから、テレビシリーズもAmazonプライム・ビデオのリストに上がってきていたのを見つけてガッツポーズしましたね。

本当に計算され尽くした人を惹きつける作品であると思います。

テーマがごちゃ混ぜなのになぜか腑に落ちる

キリスト教・カルト教団・親子関係・盗撮・性描写・愛

これ全て、この映画の大事なテーマですね。

ありがち、題材にされがちなテーマばかりを、ごちゃ混ぜにしたと言ってしまえばそうなんですが、これが全て『愛』によって最終的に完結してしまうところが、監督の脳みその計り知れない部分であると感じます。

常に社会的な問題は取り上げたいと語っている監督は、時代とともに見る側の情報に開きがあるという前提で、身近な共同体の話を描くことがむしろ社会的な問題を説明的過ぎずに語り得るのではと考えているようです。

キリストをカリスマの象徴として、カート・コバーンと並べて描いているところも面白いなと思いました。

主演の西島隆弘という人物が心を鷲掴みにする

最初から最後まで、魂の美しさと純粋さをいろんな形で演じきった【西島隆弘】という人物に、じわじわと心を鷲掴みにされていく映画でもありました。

ほぼ知識ゼロで見た映画だったので、この人物がどんな存在で、どんな風に役者と絡んでいくのか、主役なのか、脇役なのかさえ知りませんでした。

気づけば【西島隆弘】から目が離せなくなり、

これは演技なのか素なのか、

一体どんなキャリアがあってこのような芝居をしているのか、

【ユウ(役名)】が【西島隆弘】なのか、

【西島隆弘】が【ユウ】なのか、

公私混同してしまっている自分がいました。

面白いな〜。

こんなすごい芝居をする人をなぜ今まで知らなかったんだろう、とさえ思いました。

アイドルグループAAAの人だったんですね。

爽やかで明るい「変態」をきっちり演じ切っています。

この映画はこの人の絶対的なブレない「爽やかさ」によってかなり高い質を維持しているのではないでしょうか。

唯一無二の才能【ゆらゆら帝国】との融合

映画全体をジトーッと包んでいる空気感、グルーヴ感、それを可能にしているのは、かつての伝説のサイケデリック・バンド【ゆらゆら帝国】の音です。

類い稀な唯一無二の雰囲気を醸し出すバンドですよね。

その浮遊感が、カルト教団の現実離れした世界観とマッチしているし、とても印象的に仕上がっています。

監督は、

ゆらゆら帝国を使うってことが決まり、『空洞です』でやろうと思ったから、最初のシナリオよりもっと”空洞”という言葉を思い切って入れてみたんです。そしたら、ゆらゆら帝国のあの曲が映画にすごくハマった。人を愛して、ものすごく虚しくなる気持ちを”空洞”ということに当てはめると、すごくいいなと思ったんです。

音楽と映画の融合を語っています。

なんとも皮肉なのは、この映画に使われたアルバムの完成度が高すぎたせいか、その後ゆらゆら帝国が新しいアルバムを発表することはなく、解散してしまったということです。
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監督曰く【完全なエンターテイメント】作品である

「小さな頃に見てワクワクした映画の記憶を大切にした。なおかつ、そういう映画を見たことがなくても楽しめる、いろんな好みの最大公約数を、観客の目になって考えた」

これは、監督の鏡とも言える発言ではないでしょうか。

暴言のように聞こえる、園子温監督の日本映画批判というのは、映画に対する「愛」の深さ故なんだと思います。

そして、実際にこうして心をえぐりながらも人を感動させる映画を撮っているということが、何よりも「映画愛」を感じさせる証であると感じました。

実話を基に描くというスキャンダル的要素

監督の自主制作映画時代からの友人で、かつて盗撮界のカリスマと崇められた男が、新興宗教にはまってしまった妹を教団から力ずくで奪い返したという実話がベースになっている本作。

最初は、その男の「変態」ぶりを中心に描くつもりだったけれど、主人公の設定をかなり変えてしまい、盗撮以外のいろんな要素を付け加えていったら、結局あれだけの長い作品になってしまったということらしいです。

カルト教団の描写というのはありがちですが、それがくすんでしまうほどに、ほかの要素がぶっ飛びすぎています。

また、そのひとつひとつの要素を割と丁寧に描いているところもあるので、飽きさせない見応えとスピード感がほどよくあります。

あの一筋縄ではいかない【園子温】という男が描く、新興宗教というモチーフ自体にも興味が湧くのではないでしょうか。

ここに、怪演甚だしい【安藤さくら】演じる「コイケ」が驚異的な存在感でまとわりついていて、かなり嫌悪感を抱いてしまいました…。

ちょい役が豪華でチョイチョイお得感

この映画を撮った時に、こんなにまだまだ下積み時代だったんだと、しみじみ感じることができる人物が2人出てきます。

一人は【綾野剛】さんです。

主人公のユウが暴走族の集会所を訪れた時にちらっと登場します。

超ロン毛の、族の幹部っぽい役でした。

しかし、その透明感というか清潔感というか、どことなく品がある存在感は隠せていませんでしたね。

もう一人は【松岡茉優】さんです。

カルト教団から奪還されたヒロインのヨーコが預けられた親戚宅、そこの娘役として登場します。

ラストの穏やかな空気感の中で、まだあどけない屈託無い笑顔で接してくる親戚の子。

その子が何気無く話す言葉によって、ついにヨーコが覚醒するという、かなり重要なキーパーソンであると言えますね。

キラキラした目が印象的で吸い込まれるようでした。

ここまでの完成度はズバ抜けたエンタメ!

とにかく、2時間足らずの映画でさえ途中でウンザリしてしまうものだってあるくらい、人を何時間と惹きつけていられる作品というのはそう多くないと思うんです。

でも、この4時間に及ぶ【愛のむきだし】はずーっと飽きずに観られるし、最後の章では感動で揺さぶられ涙してしまったくらいです。

この切なさは一体何なんだろう。

激しい暴力シーンあり、

コントか!と思わず突っ込みたくなるシーンあり、

10代の思春期真っ只中の恋バナあり、

性描写あり、

しつこいくらいの盗撮シーンあり、

カルト教団の洗脳シーンあり、

殺人シーンあり、

これだけ盛りに盛っているにも関わらず、

「愛」で貫き「愛」でしめる。何やこれ。

そう呟きながら、終わってしまった時には寂しさがこみ上げるという、エンタメを通り越して、もはや「恋」と言えるかもしれない。

この映画に恋してしまったということかもしれない。

これは結局、見る側がこの映画に恋してしまうという胸キュン」映画なのではないか、そう思えてくるほどすごい力を秘めた映画です。

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まとめ

おバカなエンタメ映画の真骨頂【愛のむきだし】

監督・原案・脚本/園子温
出演/西島隆弘、満島ひかり、安藤さくら、渡辺真起子、渡部篤郎、板尾創路
テーマ音楽/ゆらゆら帝国
日本公開/2009年1月31日

それでもただ面白おかしいだけじゃない、俳優の体当たり演技が観るものを4時間という長い時間ずっと惹きつけていられる、ものすごい計算された純愛物語

映画の面白さが本当によく出ている作品だと思いました。

まだまだキャリアの浅い、本作が本格的な演技デビューと言えるような新人のヒーロー・ヒロインにやられます。

満島ひかり西島隆弘、最後の最後でやっと最高にキュートな2人のスマイルが見られて、全ての嫌悪感が一掃されてしまいました。

キレの良いアクションシーンや美しい女装、コント調の盗撮シーン、コント並みに吹き出る血しぶき、破天荒な大人が子供の人生を弄ぶ理不尽さ、カルト教団の非人道的行為、全てにおいて嫌悪と感動の渦巻いた感情を抱かずには観られない映画だと思います。

ひょんなことから久しぶりに「映画」という娯楽に覚醒した私ですが、やはり映画っていいもんですね。

あえてあらすじは伏せておきますが、とにかくオススメの映画です。

【愛のむきだし】、まだ観ていない方はぜひ秋の夜長のお供にいかがでしょうか。

本日も最後までお読みいただきありがとうございます。

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