ー本記事は2019年6月19日に公開済みですー
私の母親の話ですが、
なぜか、私が新潟に嫁いでからやたらと【へしこ】を買うんです。
生まれも育ちも兵庫県の西の方、発酵食品は好きな方ですが、
私が実家にいた頃はそんなもの食卓にあげたことなんてないのに、
なぜ娘が日本海側ルート上の土地に嫁にいった途端に「へしこ、へしこ」言うようになったのでしょうか? スー(@bacteria_suzu)です。
本日もお越しいただきありがとうございます。
兵庫ー新潟間の途中に福井県があり、道中でへしこを見る機会があるとはいえ、
ほぼ毎回へしこを買っている母親・・・。
しかも、必ず我が家の分まで買ってくれます。
そのおかげで私は新潟に縁ができてから【へしこ】を知りましたが、一番最初に母親からへしこを勧められて半信半疑で食べたとき、
見た目からは想像できない旨さに感動したのを覚えています。
母親も私と同じ感動を味わい、それを忘れることができないのでしょうね。
これ、知らない人は人生損していますよ!
今日は、そんな私たち親子をとりこにした福井県の伝統郷土食品である【へしこ】について、
・へしこの驚くべき豊富な栄養と効能
まとめたいと思います。
【へしこ】ってどういう食べ物?
ご存じない方には、その名前からは何も想像できないかもしれませんね。
【へしこ】ちょっと間抜けな名前ですしね。
でもちゃんと意味があるんですよ。
へしこんだ鯖
【へしこ】という名前の由来には諸説あります。
その中で私が採用したいなと思ったのは「へしこんだ鯖」という説です。
樽に重石をかけて「圧し込む(へしこむ)」漬物。
無理矢理に押し込んで漬け込むというニュアンスを「へしこむ」と言うそうです。
特に福井県の若狭地方ではこの「へしこむ」と言う言葉が漁師言葉として親しまれていたことから、鯖を使ったへしこみ漬物を略して「へしこ」と呼ぶようになった説。
これは、とても自然な由来のような気がします。
そのほか、
などの由来もよく紹介されていますが、へしこんだ鯖ですから「へしこ」なんじゃないでしょうか。
へしこは福井県若狭地方の冬の貴重な保存食
古くは、鎌倉時代から魚のぬか漬けは作られていたそうです。
福井県のへしこは、江戸時代中頃から盛んに作られるようになったと言われています。
福井県美浜町は、若狭湾に面した魚介類が豊富に獲れる地域です。
日本海に面したこの辺りでは、11月末ごろから海がよく時化るようになり漁に出られなくなる日が続きます。
そのため、冬の貴重な保存食として、鯖や鰯が豊富に獲れる時期にそれらを塩漬けにして保存するという習慣が生まれました。
北陸地方の冬は、積雪も多く冬場の食糧確保は大変重要でした。
そのため、へしこなどの保存が効く動物性タンパク質は、長年人々を食糧不足から守ってきた優秀な保存食だったといえますね。
また、鯖が豊富に獲れるこの地域から、保存性を高めた状態の鯖を京都に献上するという役割も担っていたそうです。
俗にいう『鯖街道』がその献上コースですね。
当時はもちろん人力で運搬していたので、日持ちがするへしこは京都に到着した時点でも、腐ることなくむしろ旨味が増した大変美味しい鯖となっていたことが想像できますね。
へしこが福井県で生まれた理由
へしこ発祥の地とされている福井県は鯖が豊富に獲れる漁場があります。
さらに、へしこの味はぬかで決まるとも言われるほど、漬け込むぬかが重要な味の決め手になるといってもいいでしょう。
福井県はそんな米ぬかも良質であるといえます。
なぜなら、福井県はあの「コシヒカリ」が生まれた土地であるのですから。
あまり知られていないかもしれませんが、福井県は良質の米どころなのです。
この2つの役者が揃っているのですから、へしこが美味しいのは当たり前ですね。
【へしこ】は栄養満点の魚のぬか漬け
では、へしこの生い立ちがわかったところで、次はあの美味しさがどこからきているかを検証してみたいと思います。
へしこは主に鯖などの青魚を使って、塩漬けからぬか漬けを経て作られています。
では、私と母親をとりこにした【へしこ】の正体に迫っていきましょう♪
脂の乗った鯖を塩漬けにする
へしこ作りは、原料となる鯖が旬を迎える秋から冬にかけて行われます。
この時期の脂の乗った鯖を開いて、エラや内臓を取り除いてきれいにした状態で樽に塩漬けにしていきます。
たっぷりの塩をした鯖を樽に詰め込みフタをします。
4〜5日目には水が上がってくるようですが、長いところで待つこと1週間から2週間。
ここまでは梅干しの塩漬けのような感覚ですね。
へしこの主役は米糠!?
先ほどもちらっと触れましたが、へしこの味は米ぬかで決まるといわれているほど、単なる漬け材料というだけでは終わらないのが「ぬか」です。
塩漬けして水が上がってきた鯖の樽に、そのぬかをたっぷり入れていくそうです。
水を抜くわけではなく、そのままぬかを入れるそうなので、鯖から出た旨味は一切逃げませんね。
伝統的な製法では、ぬかと赤唐辛子のみを加えるようですが、最近ではその際一緒に醤油や麹、みりんなどの風味付材料を加えることも少なくないようです。
そうして、その店ごと家庭ごとの味を作っていくのでしょうね。
1年以上寝かせて発酵させる
へしこは、冬仕込みの土用越えをすることが大切だと言われています。
味噌の発酵と同じで、夏の暑い時期を経ることによってぬかの発酵を促し、乳酸菌などの微生物の活動を活発にすることが重要なのでしょうね。
そうすることで、いろんな化学変化を生み出し、鯖が本来の旨味以上の極上の仕上がりになっていくのでしょう。
塩とぬかだけで始まるへしこ作りですが、
鯖の脂と微生物が生み出す様々な代謝物によって、想像をはるかに越えた多重奏の深い味わいになるといえますね。
へしこの栄養と効能
1年がかりで仕上がった【へしこ】は、発酵と熟成を経て栄養も旨味も増し増しな食材へと変化しています。
さらに酵素や菌の活動によって、消化吸収されやすい体に優しい食品に生まれ変わっているのです。
では、その栄養と効能を詳しくみてみましょう。
乳酸菌まみれのアミノ酸食品
まさしく、糠床は乳酸発酵の極みです。
そこに漬かった鯖のタンパク質が乳酸菌によって分解され、強い旨味や香りが生まれます。
さらに、分解されたタンパク質はアミノ酸となり、体に吸収されやすい状態となります。
そのままでは消化吸収に時間がかかる動物性のタンパク質も、発酵・熟成という過程を経ることによって、体にとって負担の少ない栄養素となって吸収することができますね。
乳酸菌が生み出す生産物質もまた、腸内環境を整える役割を果たしてくれます。
へしこに浸透しているとはいえ、へしこ表面に付いているぬかは洗い流さずうまく利用して頂きたいですね。
ペプチドが5倍に!
これは、血圧の上昇を抑える働きを持ち、高血圧の方の血圧を安定化させる働きを持つといわれています。
そのペプチドが、へしこになる前の鯖と比べると、なんと5倍にも増えるというのですから、かなり効果を実感できるのではないでしょうか。
また、ペプチドには抗酸化作用・ホルモン作用・免疫調節作用などの効果があり、アンチエイジングにはもってこいの食品だといえます。
DHA・EPAをたくさん摂取できる
私たちにとって必須脂肪酸である「DHA・EPA」という栄養素が、へしこにはたっぷりと含まれているといいます。
必須脂肪酸は実は大変酸化しやすいので、本来は新鮮な魚から摂取することが推奨されます。
しかし、へしこになった鯖は「ぬか」による抗酸化作用で酸化を防ぎ「DHA・EPA」を損なうことなくたくさん摂取できるのです。
DHAには、
・動脈硬化予防
・高脂血症予防
・ガンの抑制効果
・アトピー・アレルギーの改善
これらの効能があります。
EPAには、
・血栓予防
の効果があります。
豊富なビタミン・ミネラル
ぬかは玄米の外側ですよね。
玄米の外側って「胚芽」です。
そう、この胚芽の密集地帯であるぬか床には、玄米の持つ栄養素がたっぷり含まれているのです。
ビタミンE
カルシウム
鉄分
などが豊富で、さらに鯖の持つビタミンBを5〜10倍に増やしてくれるという嬉しい効能も持っているのです。
また、約20%の塩分濃度に保つ塩漬けの効果で、ミネラルもたっぷりと摂取できるでしょう。
魚の栄養とぬかの栄養のダブル効果で、へしこは体にとってとてもありがた〜い発酵食品だったのですね。
まとめ:へしこは体にとって栄養と効果が豊富な健康発酵食品
へしこって、馴染みがない人にとっては「塩辛くてぬか臭いもの」という印象もあるかもしれません。
しかし、臭いものって体に良いものが多いですよね。
そして、ボコボコと真夏の発酵を経て出来上がった青魚のぬか漬けは、旨味がすごいこと間違いなしです。
福井県のいろんなところで売っているへしこですが、これまで5本は食べたと自覚している私に言わせると、作り手によって味が全然違うということです。
原材料がぬかと塩と鯖だけのシンプルな製法のものは、やはりちょっと塩気が強く感じられます。
しかし、一番飽きない味であるとも言えます。
私たち親子は、おそらく観光客向けの大雑把なへしこしか食したことがないと思いますが、もっと地元のコアな「〇〇さん家の秘伝のへしこ」みたいなものもぜひ味わってみたいなと思います。
自分で漬けてみる??・・・とは今のところまだ思えません。
1本のへしこがあれば、それの利用方法によってはかなり長期で堪能できるほど濃厚な味わいのへしこ。
そんなへしこの我が家おすすめの頂き方はこちらの記事↓↓↓で紹介しているので、のぞいて見てくださいね。
本日も最後までお読みいただきありがとうございます。
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