ー本記事は2019年5月22日に公開済みですー
飴色に輝く漬物、
芳醇な風味とカリカリポリポリの食感がたまらない漬物、
漬物界の女王とも呼べる漬物、
それは奈良漬。
アルコールが苦手な方は敬遠しがちかもしれませんが、この濃厚な旨さは高級チョコレートにも匹敵するのではないでしょうか、スー(@bacteria_suzu)です。
本日もお越しいただきありがとうございます。
この、なんの変哲もない野菜をここまで“旨さしたたるもの”に変貌させるアイテム、それが酒粕です。
奈良漬を、ただ粕床に漬けただけ、なんて思っている人はいないでしょうけれど、
奈良漬の本当の工程を知ってしまうと、さすがに手作りする意欲がなえてしまいます・・・。
では、その禁断の工程の扉を開けていきましょう。
奈良漬の複雑な工程その1
粕漬けでさえ、おいしく仕上げるのは結構難しく、家で仕込む人はあまり多くないかもしれません。
ましてや奈良漬・・・、これが家で作れると思っていた私がバカでした…。
しかし、この複雑で多い工程を一からしっかりとなぞっていけば、もしかしたら自宅でも作れてしまうのでしょうか?
これからまとめていく工程を見て、「よし!自宅で仕込んでみるぞ!」と思ったあなた、私よりレベルの高い変態であると認めざるを得ませんね…。
まず、その1、その2、その3に分けて説明しないと、詳しく探れないので、じわじわ攻めていきますよ。
酒粕を踏む!?
酒粕というと、板状になっていたりバラバラしたものだったりいろいろあります。
冬に仕込まれる日本酒、その副産物として出るのが酒粕ですね。
しかし、この白い普通の酒粕からは奈良漬はできないのです!
ここから半年以上かけて奈良漬用の酒粕に仕込んでいくのです。
春が来る前に、この酒粕をタンクや樽に移し、そこからひたすら踏み込みという工程を行います。
大きな酒蔵では、タンクに直接人が入りその足で踏み踏みしていくのだそうです。
要は、中に空気が入らない状態にしていくのですね。
1週間で終わることもあれば20日以上かけることもあるそうです。
こうしてできるだけ空気を抜くことによって、嫌気性の微生物の活動を促して発酵させるのですね。
特に乳酸菌が増え、さらに酵素も大量に増えるのでその働きで糖やアミノ酸を作り出します。
夏過ぎには出来上がります。
酒粕を練る!
はい、まだまだ酒粕の工程は終わりませんよ。
踏み込んで半年以上寝かせた状態で発酵を促した酒粕を、今度は練り上げていくというのです。
ここでこだわりのある老舗店なんかは、数種類ある酒粕から漬け種(野菜)にあったものをブレンドしていくそうです。
そしてそれらを手作業で練り練りしていくのです。
混ざり具合が均等になるようにするのが大変そうですが、もちろん1種類の酒粕でも効果は大きいと思います。
空気を抜き切った酒粕を、今度は空気を入れるかのように練るというのですから、とても尋常とは思えない工程ですよね。
しかし、こうして練っていくことで野菜となじみやすい良い酒粕になっていくのでしょう。
もし自宅で作るのであれば、すでに踏み込まれて練り上げられている『練り粕』を購入することを強くおすすめします!←あるんかい!
これで無事に酒粕の準備は整いましたね。
では次のステップへと参りましょう♪
奈良漬の複雑な工程その2
ここまで一切野菜が出てきません。
普通、漬物の工程の最初の方に野菜の仕込みがあるのですが、まずは要の酒粕からでした。
はい、ここから野菜です。
野菜を塩漬けの下漬けにする
奈良漬に使う野菜類は、熟成してから収穫するというより、少し未熟な状態で収穫したものの方が適していると言われています。
これだけ長い年月を漬け床で過ごすわけですし、途中で何回も取り出したり漬け込んだりと、手で触る機会が多いですから、それを経てもしっかりと歯ごたえが残るようにということでしょうかね。
この野菜を、まずは塩漬けするのですが、タイトルからも分かる通り塩漬けも2回するんですよ。
塩漬けの下漬けってなんや??
のだそうです。
15%〜20%もの塩分濃度で野菜をつけ、しっかりと重石をすると一晩でひたひたの水が出るそうです。
奈良漬でよく使われる瓜などは、ヘタを取り除いたくぼみにすれすれ一杯の塩を乗せて漬けていくそうです。
もったいないですが、ここで後々の奈良漬の味の軸が決まるといってもいいくらいなので、できれば美味しい天然塩を使いたいですね。
野菜を本塩漬けする
一晩漬けた野菜の水気を取り、再び同じような塩漬けを行います。
しかし、野菜の水分をしっかりと抜き取りたいのであれば、もう一度塩漬けにして水分が上がってくるまで待ちます。
これでやっと役者が揃いましたね。
あとはこれを使って仕込んでいくだけです・・・が、ここからが奈良漬の奈良漬たる繰り返し地獄が始まるのです・・・。
奈良漬の複雑な工程その3
いよいよ酒粕を使って野菜を漬けていきます。
3年かけてね・・・・。
ではひとつひとつの工程を追っていきましょう。
下漬け
練り粕と野菜をミルフィーユ状に樽の底から重ねていきます。
樽の底に酒粕→野菜→酒粕→野菜・・・・→酒粕。
この下漬け期間は、野菜の塩抜き期間でもあります。
たっぷりの塩で漬けた野菜から、酒粕の方に塩分を移し、
さらに酒粕の旨味や甘み、アルコール成分が野菜に浸透していきます。
ここは、1ヶ月以上おくといいようですね。
漬ける野菜によって、この下漬け自体を何回も繰り返すといいます。
多いと6〜8回も・・・。
まだ下漬けといっているにもかかわらず、1ヶ月とか2ヶ月単位でこれを繰り返すそうです。
この先が怖い・・・。
中漬け
気を取り直して、次!
中漬けといって、さらに野菜の塩抜きと、今度は味を整えていくという意味も含まれるそうです。
作業自体は下漬けと同じですが、塩分の移り方や野菜の漬かり具合、粕床の変化などをしっかりと見極めていく工程となります。
この工程も丁寧に1ヶ月以上をかけていきます。
上漬け
まだまだ漬け直しが続きます。
この段階では、塩分調整と本格的な調味を行うそうです。
素人が家で作る奈良漬にはこの工程はいらないかもしれませんが、プロの世界ではここで使う酒粕のブレンドによって味が決まるそうなので、作業には熟練した職人が従事されるそうです。
最初に用意した練り粕で漬ける分には、ここでの調味という工程は省いて良さそうですね。
本漬け
いよいよ仕上げの工程ですよ!
ここで練り粕に味をつけます。
甘みが苦手な方は不要ですが、味醂や砂糖といった甘みをここで加えていきます。
しっかりと塩分が抜けた野菜に、この段階で酒粕の成分がどんどん浸透していくので、大変気を使うところですね。
お店で言うと、最後の味付けとなるこの段階は気の抜けない作業です。当然熟練の職人さんの手によるのでしょうね。
この期間もお好みで、何ヶ月から何年といった場合もあるでしょう。
漬ければ漬けるほど熟成して旨味が強いものに仕上がるか、逆に漬けるほどにアルコール分ばかりが目立つ味になるか、ここで一度ちゃんと味見してみるべきかもしれませんね。
まとめ:奈良漬けの行程は知れば知るほど作る気が萎えるほど複雑だった
ここでは、本格的な奈良漬の作り方をまとめてみました。
ここから手抜きできるところは抜いて、自分でできるところはやってみる。
そんなやり方で仕込んでみてはいかがでしょうか?
とにかく一度自分でやってみないと、どうやったらあんなに黒光りするような野菜に仕上がるのかという謎は解けないですからね。
手間暇かけてやってみる価値はあるかもしれません。
これだけのことをやって失敗しないとも限りませんから、今のところ、私はやろうと思いませんが(笑)。
もちろんもっと簡単にできる方法もたくさんあると思うので、ぜひご自分で調べてみて下さいね♪
本日も最後までお読みいただきありがとうございます。